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住宅の性能を「見える化」、住宅性能表示制度の仕様とメリット、デメリットについて。

住宅の性能を「見える化」、住宅性能表示制度の仕様とメリット、デメリットについて。

注文住宅を建てるときに気になる住宅の性能値。
ハウスメーカーや工務店独自の基準ではなく、国によって誰にでもわかりやすく統一された基準によって住宅の性能を表示するのが住宅性能評価制度です。 今注目の住宅性能評価をメリットとデメリット、その仕様を解説します。

住宅性能表示制度とは

住宅性能表示制度とは2000年に制定された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」通称「品確法」といわれる法律に基づいて瑕疵担保責任義務化、住宅分証処理センターの設立と共に作られた制度です。
ハウスメーカーや工務店ではなく、国に登録されて業務を委託されている民間機関が、共通基準を基に住宅を評価するので、住宅購入者は行政によって統一された基準で住宅を比較することができるというわけです。
注文住宅の購入前に住宅の性能を評価する基準が「設計住宅性能表示制度」ということですね。
さらに、住宅を売るときにその性能を公的に判断できる指標となるのが「建設住宅性能表示制度」です。

ここからは「住宅性能評価」を取得するメリットとデメリットを解説します。

住宅性能表示を取得するメリット

住宅の性能が客観的にわかる

住宅の性能を簡単に比較することができます。
耐震性、断熱性、耐久性といった住宅の基本性能が公的な等級で表されるので、購入した注文住宅の性能に対して、ハウスメーカーや工務店の物ではなく、公的機関の客観的なお墨付きを将来にわたって得ることができます。

住宅ローンの金利や地震保険の割引がある

「フラット35」の他に「フラット35S」という質の高い住宅にはさらに住宅ローンの割引があります。
ZEH、金利Aプラン、金利Bプランと、住宅の質にしたがって住宅ローンの割引率は変わりますが、40万円から100万円程の優遇が見込めます。
さらに、耐震等級によって割引率は変わりますが地震保険の割引もあります。
こちらも最大で50%の割引(等級3→50%、等級2→30%、等級1→10%の割引)になるのでこれも大きいですね。

万一の紛争処理の支援を格安で受けられる

住宅性能評価書が交付された住宅で建築会社や不動産会社と争いが起こった場合、紛争機関が間に入り処理を行ってくれます。
性能評価に関することだけではなく、請負いや売買契約に関することも含めて、手数料1万円と格安で弁護士などの専門家のアドバイスの基に調停や仲裁を受けることができます。
一生に一度といわれる注文住宅の購入にあたり、安心を得ることができる、実はこれが一番のメリットではないかと考えています。

将来売りやすくなる可能性がある

資産評価が客観的にされるため、高い資産評価を取得することができます。
注文住宅を取得するということは、手放す可能性もあるわけです。
これは何も後ろ向きなことだけではなく、転勤等によって生活環境が変わったりということも考えられます。
今住んでいる住宅を売ったり貸したりすることで、これから住む住宅の資金を作ることができます。

住宅性能表示制度のデメリット

住宅性能表示を取ることはいいのですが、その等級をあげることにより、建築費が上がるというところにデメリットがあります。
純粋に建築費にかける費用は住宅の性能を上げる為なので、費用分相応の住宅性能の向上という見返りが期待できます。
しかし、費用の中には申請や検査に係る費用は純粋なコストアップです。

耐震性を優先させるために、間取の自由度が多少下がるといったことはあるかもしれませんが、住宅性能表示を取る上でデメリットと言えるのはコスト面だけです。
全ての項目で高い等級を取得すれば高性能な住宅になりますが、それに対して建築コストがかかります。
どの評価をどの等級でとるのかといった判断は、住宅設計者のアドバイスを受けてしっかり検討する必要があります。

ここからは「住宅性能表示制度」の仕様について解説します。

住宅性能表示制度の仕様

「住宅性能表示制度」の基準は下記の10分野に分かれています。
●構造の安定
・火災時の安定
●劣化の軽減
●維持管理、更新への配慮
●温熱環境
・空気環境
・光、視環境への配慮
・音環境
・高齢者などへの配慮
・防犯
この中でも特に重要になる必須4項目について少し詳しく解説します。

構造の安定

構造の安定では主に耐震性能を評価します。
耐震等級には1~3があり、耐震等級1は建築基準法レベルの耐震性能を満たす最低限の水準です。
耐震等級2は等級1の1.25倍と定義されています。「長期優良住宅」では耐震等級2以上が認定条件とされています。
耐震等級3は等級1の1.5倍と定義されています。2016年の熊本地震では2回の震度7の揺れに耐えていたことが調査によって明らかになっています。

建築の強度計算方法には「壁量計算」と「許容応力度計算による構造計算」があります。
一般的な木造2階建ての住宅では、建築基準法で簡易な壁量計算で構造強度を検討することが認められています。しかし、この壁量計算での耐震等級3は、構造計算での耐震等級2よりも耐震性が低くなってしまう可能性があります。

構造計算をすることで設計費用は20万円程度かかってしまいますが、当設計事務所では大地震に対して構造計算による耐震等級2を推奨します。
耐震等級3まで行くと、耐力壁の配置によってプランに制限がかかってくることもあるので。

劣化の軽減

太陽光や雨風、シロアリ等の影響によって住宅は劣化していきます。構造躯体の劣化を遅らせるための対策が講じられているかを評価します。
劣化対策等級1は建築基準法が定める対策が講じられているレベルです。
劣化対策等級2は2世代(50~60年程度)、等級3は3世代(75~90年程度)まで長持ちするように対策が講じられている状態です。

どんなに性能の高い住宅をつくってもすぐに劣化していけば意味がありません。高い性能をできるだけ長い期間維持できるような状態を保つことが最も重要だと言えるでしょう。
金融機関からも劣化対策は重要視されていて、ローンを通すために劣化対策等級を取ることが必須の金融機関もあります。
性能の高い注文住宅を購入するのであれば、劣化対策に関して考え直してみてください。

維持管理・更新への配慮

主に給排水やガス管などの設備の日常の点検、維持管理をしやすくするための対策、建築本体よりも先に寿命が来る設備配管を入れ替えるための対策が講じられているかどうかを評価する分野です。
具体的には配管の主要な部分に点検口や清掃口を設けていること、設備配管がコンクリートの下などの交換しにくい場所に設置されていないか等をチェックし、等級1~3を表示します。

温熱環境

温熱環境は住宅の断熱性能とエネルギー消費量の両方から評価します。

断熱性能については
等級1は建築基準法の水準
等級2は昭和55年に制定された基準に適合する断熱性能
等級3は平成4年に制定された基準に適合する断熱性能
等級4は平成28年に制定された基準に適合する断熱性能
等級5はZEH強化外皮基準に適合する程度の断熱性能
をもった住宅ということになっています。

エネルギー消費量については
住宅で使用する電気、ガス等のエネルギー(二次エネルギー)を、石油・石炭(一次エネルギー)等に換算して評価します。

温熱環境に関しては長くなってしまうので、別で解説の記事を書きたいと思います。
詳しくはそちらを参照してください。

まとめ

「住宅性能表示制度」では必須の4分野でも建築基準法の最低基準で等級1で認定されます。こだわる部分以外は特にコストアップの対象にならないということです。
こだわりのマイホーム、注文住宅を建てるのであれば、こだわった性能は「見える化」しておくのも一つの判断になるのではないでしょうか?
注文住宅を建てるのであればデザインや使い勝手はもちろん譲れませんが、一生に一度の買い物である注文住宅の性能を設計者のような専門家でなくても理解して説明できるものにしておくのもいいと思います。
この他にもローンや地震保険の優遇や紛争処理センターの利用などのメリットがある「住宅性能表示制度」、余裕があれば利用してみてもいいのではないでしょうか。

執筆者略歴

[執筆者 / 監修]
三浦喜世
一級建築士
2007年から一級建築士事務所YMa主催
大阪、兵庫を拠点として店舗、注文住宅、共同住宅等の設計及び監理を行う。
[受賞歴]
リノベーションアイデアコンペ 視点特別賞 受賞
東京デザイナーズウィークプロ作品展 出展
Design Competition in Kainan 入選
デザイントープ小論文コンペティション 入選

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