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飲食店の厨房のオープンキッチンとクローズドキッチンの特徴を解説します

大阪で店舗のデザイン、設計、施工を行っている[YMa]です。

飲食店をつくる場合、キッチンのあり方はたいへん重要になってきます。
キッチンをどのような立ち位置で設計するのかによって、その店舗のイメージが大きく変わるので、デザインの初期段階でしっかりとしたコンセプトを設定しておかなければいけません。

飲食店のキッチンを考える場合、大きく分けて客席と厨房に仕切りがなく、客席から厨房が見渡せる『オープンキッチン』と、厨房が客席から見えない『クローズドキッチン』の二つのパターンが考えられます。

大規模な店舗で面積に余裕がある場合は、仕込厨房やセントラルキッチンを併設したりして、それらの複合でレイアウトをデザインすることもありますが、通常はどちらかを選んでつくることになります。
それではそれぞれの厨房の特徴を解説していきます。

オープンキッチンとは

オープンキッチンは客席と厨房が明確に仕切られずオープンになっているのが特徴です。
勿論お客様から厨房が丸見えになるのですが、スタッフとの会話を楽しむことができて、調理の様子を見せる演出ができたり、厨房の活気が伝わってくるレイアウトです。
カウンター越しの雰囲気を楽しむのも、お店で食事する楽しみの一つだったりしますよね。

特に小さい店の場合は、スペースの有効活用や接客、オペレーションのやりやすさも兼ねてオープンキッチンにすることが多いです。
小規模な個人店舗では、オーナー兼料理人との会話を楽しみに訪れるお客様も多いので、よりオープンにする傾向が強くなります。

業態で言えば、ラーメン店や寿司屋、焼鳥屋等のカウンター越しのやり取りを楽しみ、活気ある雰囲気を演出したい店舗に多く採用されています。

オープンキッチンのメリット

調理の過程がエンターテイメントになる

料理が出来上がっていく様子をお客様に見ていただくことができます。調理中の香りや音が五感を刺激し、待ち時間もエンターテイメントとして楽しんでもらえる他、料理人との会話も楽しむことができます。

お客さまに安心感を与えることができる

キッチンが丸見えになるので、厨房スタッフは整理整頓、清掃を常に心がけることになるでしょう。
調理の様子が丸見えになることで、衛生面への配慮を見ることができて、お客様は安心感を持つことができます。

厨房スタッフが客席の状況を把握できて、オペレーションが簡素化できる

厨房から客席の様子が見渡せるので、客席の込み具合や食事の進み具合を厨房スタッフも確認できます。
調理スタッフは料理の提供のタイミングを見計らいやすく、ホールスタッフは厨房の様子が分かりやすくなります。スタッフ間の連携が取りやすくなれば、少人数でのオペレーションも可能になります。

厨房スタッフがお客様の反応を直に感じられるのはモチベーションの向上にも役立ちます。

オープンキッチンのデメリット

調理だけに集中できない

厨房が常にお客様に見えているということを意識しないといけません。
ピーク時にも人目を気にして仕事してください、厨房内が整頓されていることは当然ですが、心も落ち着けてください。技術の未熟なスタッフへの指導も見られています。

厨房内のデザインにもこだわってしまう

見える厨房は内装デザインにもこだわってしまい、工事費がかさんでしまうことも。。。

客席の内装が汚れやすく、厨房の臭いも客席に流れやすい

厨房から客席が直結しているので、厨房内の油が客席に飛散しやすくなります。
床が滑りやすくなったり、テーブルがべたべたしないように日々の清掃にも力を入れなければなりません。
鉄板やコンロ廻り等は耐熱ガラスで囲う等の工夫をしましょう。

更に厨房の臭いも客席に流れやすくなります。
厨房内は換気量が多く、負圧になっているので空気は厨房側へ流れていくような設計にはなっているのですが、油が飛散するという事は臭いも飛散するという事です。
店舗内の空気の流れにも配慮しなければなりません

厨房内の臭いが客席に流れていきやすい


クローズドキッチンとは

客席と厨房が壁等で完全に仕切られているのが『クローズドキッチン』と呼ばれるキッチンの形態です。
『クローズドキッチン』ではお客様から厨房内の様子が見えないので、料理人は料理に、お客様は同伴者との食事に集中することができる反面、料理人との会話を楽しみたい場合には向いてません。
オペレーションの人数がかかりがちなので、あまり個人店舗で採用されることが少ないように思います。
フレンチやイタリアン等の洋食、ファミリーレストラン等に多くみられます。

クローズドキッチンのメリット

料理に集中できる

クローズドキッチンでは調理スタッフが料理に集中できますし、お客様の目が届かないので、業務用の会話や指示もやりやすくなります。効率よく調理を行う事ができる環境を作りやすくなります。

ただ、調理の効率はクローズドキッチンだから良くなるというわけではなく、厨房機器の配置や動線によるところも大きくなります。店舗デザイナーとよく話し合って使いやすい厨房を作る必要があります。

客席と厨房をそれぞれ機能的につくり込みやすい

客席と厨房が仕切られていることで、それぞれの空間をつくり込みやすくなります。
客席では、照度を確保する為に明るい厨房が目に入らずにすむので、心地と雰囲気を優先したデザインがまとまりやすくなります。反対に厨房では、客席からの見え方を気にせず、機能に特化した空間をつくることができます。

クローズドキッチンのデメリット

料理人が客席の様子を把握できない

厨房スタッフが店内の様子を見ることができないので、客席の込み具合や、食事の進み具合、待ち人数等を把握しにくくなります。オープンキッチンとは異なり、お客様に合わせたスピードで料理を提供することが難しくなります。

クローズドキッチンとは言っても、厨房内から客席を見渡せる窓を作っておいてもいいかもしれません。

オペレーションが複雑になりがちで、人数が必要

厨房から客席が見えないために、店舗を運営する為に最低でも調理スタッフとホールスタッフ各一人ずついないとオペレーションが難しくなります。
調理スタッフには客席の状況が分からないので、ホールスタッフとの連携が大切になります。

オープンキッチンorクローズドキッチン

どちらを採用するにせよ、複合的な厨房をつくるにせよ、大切なのはお店の営業方針とコンセプトです。
厨房は一度つくったら変更するのは難しいので、最初のコンセプトの設定が大切になってきます。
デザイナーにもアドバイスをもらいながら、プロジェクトの初期にぶれないコンセプトを設定しておきましょう。

執筆者略歴

[執筆者 / 監修]
三浦喜世
一級建築士
2007年から一級建築士事務所YMa主催
大阪、兵庫を拠点として店舗、注文住宅、共同住宅等の設計及び監理を行う。
[受賞歴]
リノベーションアイデアコンペ 視点特別賞 受賞
東京デザイナーズウィークプロ作品展 出展
Design Competition in Kainan 入選
デザイントープ小論文コンペティション 入選

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