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墨モルタルとは?施工前に知っておくべきこと!

墨モルタルとは?施工前に知っておくべきこと!

店舗の床に墨モルタルを施工しました。
当設計事務所では過去最大面積の墨モルタルの施工なのですが、素材の特性上安定しない品質をどう処理するのか?それとも不安定な表情をそのまま楽しんでしまうのか?
どちらにしても墨モルタルを採用するなら、施工前に知っておかなければいけないことがいくつかあります。

墨モルタルとは?

墨モルタル
●店舗を総合的にデザイン、設計、施工します!

墨モルタルとは、コンクリートの材料ともなるモルタルに、現場調合で墨をまぜて黒色に調色したモルタルのことです。
店舗や住宅のアプローチ等で小面積の部分にアクセントとして採用されることが多いです。

墨入りに限らずモルタルはガラスや石、貝殻なんかを埋め込んだり、手形等の型をつけたりすることができて、遊び心がくすぐられる材料だと思います。その上、墨色の黒いモルタルは見た目にも様々な表情を出し、味のある材料です。

墨モルタルは魅力的な素材ではあるのですが、元々がモルタルなのでその日の気温等によって乾くスピードが異なる上に、墨を現場で調合するため、品質の安定を求めると難しい材料になります。
今回の店舗の現場では今までで一番広い面積に墨モルタルを打ちました。墨モルタルの特性の解説と共に、品質管理も含めて現場で苦労した部分もご覧ください。

●ダイニングの床に墨モルタルを施工した大阪の飲食店です
●床をモルタルで仕上げた美容サロンです。墨モルタルとは違う明るい雰囲気の床も参考にご覧ください。

墨モルタルを使う時の注意点

墨モルタルを採用する上で注意しておかないといけないのは、主にエフロレッセンス(白華)とクラック(ひび割れ)です。

エフロレッセンス(白華)

エフロレッセンス(白華)
コンクリートに含まれる成分が表面で白っぽく変色するエフロレッセンスは、通常のモルタルでも起こることなのですが、黒い墨モルタルでは余計に目立つことになるかもしれません。
エフロレッセンスは結構いろんなところで見ることができます。写真は極端な例ですが、このエフロレッセンスを完全になくすことは難しいです。
墨モルタルの乾燥後にペンキでタッチアップするか、クリアの防塵塗装なんかを施せば見栄えが改善されます。
ただし、あまり塗装しすぎると墨モルタルの独特の表情が薄まってしまいます。

※エフロレッセンスとはモルタルに含まれる成分が内部から表面に移動し、乾燥することでコンクリート表面に濃縮されます。これが空気中の二酸化炭素と反応して白色の物質となることを言います。

クラック(ひび割れ)

クラックに関しても、墨モルタルに限らずモルタルでは避けては通れないものです。
床をモルタル仕上にしているおしゃれなカフェなんかも多いと思いますが、時間が経った古いモルタルの床は必ずひび割れしています。
モルタルで仕上げる場合はこのひび割れも味として感じることのできる感性が必要かもしれません。

自然素材は人工的に作られた新建材のような劣化の仕方はしなくて、経年変化として楽しめるような時間の経ち方をします。
墨モルタルを採用するなら素材の経年変化も楽しみましょう。

仕上がりの色はサンプルを作ってもらって決めよう

墨色とはいっても灰色から黒色まで多様です。
施工中は、墨を混ぜたモルタルは真っ黒に見えるのですが、乾くと色が薄くなります。
墨モルタルの黒さは、施工前にサンプルを作ってもらって、乾燥したもので仕上がりの色を決めましょう。


ただし、気温によって乾くスピードが異なるので、墨の量や仕上げるスピードを変えたりという調整を行ったとしても、仕上がりの色を合わせるのは大変難しいです。
色むらは出るものとして、墨モルタルの場合は仕上がりが思い通りにはいかないと、温かい目で見てください。

施工面積が広い場合は継ぎ目ができる

住宅のアプローチや玄関土間等の好面積に施工する場合はあまり関係ないのですが、店舗のダイニング全体といった広範囲にわたってモルタルを打つ場合は打ち継ぎによる継ぎ目ができてしまい、色むらの原因となってしまいます。
この打ち継ぎについては墨を入れていない通常のモルタル仕上でも同様なのですが、装飾性がより高い墨モルタルは余計に気になるところです。

できるだけ継ぎ目をわかりにくくする努力をするのですが、例えば誘発目地を利用します。
モルタルは打設後4週間程度で一気に硬化し、その後ゆっくりと硬度を増していきますが、その時の初期クラックを抑制するために誘発目地を入れておくことがあります。この目地のところで打ち継ぐと、色むらが気にならなくなります。施工前にどこに誘発目地を入れておくのかもデザインしておきましょう。
また、クリア防塵塗装をすることでも色ムラは改善されることが多いです。

仕上がってからでも墨モルタルを触れば黒色がつく?

その他に注意しておくところは、コンクリートに墨を混ぜているため、仕上がってからでも触れば黒色がつくことがあります。
床の場合はあんまり触ることは少ないかもしれませんが、土間をはだしで歩いたら脚や靴下が黒くなったり、その色が室内の床に移ったなんてことになるかもしれません。
これもクリア防塵塗装をすることで防ぐことはできます。

クリア防塵塗装でデメリットを緩和することができる

色ムラやエフロレッセンスや色がつく等の不安定な仕上がりは、墨モルタルの表面にクリア防塵塗装したり、ワックスをかけることである程度は回避できます。
クリア防塵塗装は永久的なものではないので定期的なメンテナンスは必要になるのですが、当設計事務所では墨モルタルとクリア防塵塗装はセットで考えています。

墨モルタルを空間デザインに取り入れてみよう

墨モルタルは、色ムラが出たりエフロレッセンスによる経変変化がおこったりと、コントロールのむずかしい材料です。
その代わりに、一定ではない様々な表情を見せてくれる味わい深い材料でもあります。
ひび割れや、経年変化を楽しんでいただけるようなら、いつまでも飽きずに見ていられますからおすすめの材料です。


似たような感じの素材でカラクリートというカラーモルタルもあります。
こちらは黒色だけではなくいろんな色が作れるのですが、墨モルタルほどの表情は表れないかもしれません。
●アプローチの土間にカラクリートを塗った店舗の施工例です

モルタルは石やガラスを嵌め込んだり、手形をはじめとした型を付けたりと仕上げを楽しむことができ、経年変化も楽しむことができます。
新建材などの人工建材では経年変化は劣化としてしか見れませんが、自然素材は手入れに手間がかかるのですが、経年変化によって味を増してきます。
様々な表情を見せる墨モルタルを、住宅や店舗の土間にいかがですか?

●大阪、神戸で建築家住宅を建てるには
●新築にはない魅力を引き出します、マンションリノベーションデザイン

ここからは【店舗の施工事例】をご覧ください

過去最高の面積に墨モルタルを打ちます

墨モルタルの施工
今回は店舗のダイニングの床に墨モルタルを採用しました。
もともと床には黒い石かタイルを貼ろうとしていましたが、予算が合わず、その時に出てきたアイデアが床の一部(路地と名付けてた通路部分)にタイルを貼って残りは墨モルタルでどうかということだったのです。

しかし、これがなかなか大変でした。ダイニングの床の大部分なので40㎡と面積が広かったのです。
ただでさえ品質を安定させることが難しい墨モルタルを、これだけ広い面積で打ち継ぎながら打つのは初めての経験です。


「うまくいかないかもしれない」という不安げな左官職人との協議が始まります。

墨モルタルの打ち継ぎ部をデザインする

広い面積にモルタルを打つ場合、一体で打つことは難しく、ある程度の面積で区切って打っていきます。通常のモルタルでも、広い面積になると、この打ち継ぎ部分が仕上げに影響してくるのですが、装飾性の高い墨モルタルなら余計にその打ち継ぎが気になるかもしれないというところで悩んでいたのです。

しかし、この現場では店舗空間の性質上、可動間仕切が配されています。建具をすべて取っ払ったら床が丸出しになってしまうのですが、通常は可動間仕切に仕切られて個室に小分けされているのです。
打ち継ぐならこの可動間仕切を閉じたときの建具の下で打ち継ごうということになり、同時にそこにひび割れを低減させるための誘発目地を取ります。

何とかうまく打ち継ぐことができそうです。

色むら・エフロレッセンス(白華)への対応策

墨モルタルの施工
墨モルタルは施工時には真っ黒に見えます。これが乾くと色が薄くなるので、現場でモルタルを見て色を決めるのではなく、事前に作ってもらったサンプルを見て色・墨の分量を決めておきます。
それでも、その日の気温や湿度によってモルタルの乾燥に影響が出るため、墨モルタルは品質を安定させることが難しいのです。

さらにエフロレッセンスです、墨モルタルの施工ではこれは避けては通れません。
通常のモルタルでは気にならない程度のエフロレッセンスでも黒い墨モルタルでは気になってしまいます。

※エフロレッセンスとはモルタルに含まれる成分が内部から表面に移動し、乾燥することでコンクリート表面に濃縮されます。これが空気中の二酸化炭素と反応して白色の物質となることを言います。

こういった色むらやエフロレッセンスは完全に防ぐことはできません。施工面積が広くなればそれはさらに難しくなります。
それらを緩和するために、モルタルが乾いた後にペンキでタッチアップしてからクリア塗装(防塵塗装)を施すことにしました。
これによって墨モルタルに艶が出て色ムラやエフロレッセンスが緩和されます。
ただし、塗装は永久に持つわけではないので、定期的なメンテナンスが必要になりますが、この手間も自然素材を楽しむためのものと考えてください。

墨モルタルの施工に踏み切ります!

墨モルタルは色ムラやエフロレッセンス、ひび割れが目立ちやすく、品質を安定させることが難しいので、思った通りの色を出すことに潔癖な方はちょっと向いていないかもしれません。
この店舗のオーナーは自然な色むらを好んで頂けて、定期的なメンテナンスも行っていただける方だったので、実際に墨モルタルの施工に踏み切りました。
墨モルタルをはじめとして、メンテナンスに手間のかかる自然素材は、特に事前に材料の特性をしっかり説明して納得 していていただかなければいけません。

●この施工事例の店舗の竣工写真はこちらからご覧ください

最後に -墨モルタルのメンテナンス

墨モルタルのメンテナンスは定期的にクリア防塵塗装をするか、ワックスをかけることです。頻度は室内でもあるのでそんなに多くなくてもいいとは思いますが、様子を見ながらという感じになります。
もともと、既存店舗では3カ月から6カ月に一度くらい床にワックスをかけているということだったので、それだけの頻度だったら十分でしょう。

墨モルタルの豊かな表情と経年変化を楽しみ、メンテナンスしながら時間が経てば経つほど魅力的な店になるようにしていきましょう!

住宅・店舗づくりを検討中の方へ

空間デザインでは、構造や設備、メンテナンスのしやすさやの他、店舗では集客等にも配慮し、さまざまな目的の基に提案を行い、最終的に心地良い空間を求めるものだと思っています。

当社では基本的には設計施工で承っておりますが、設計のみ、施工のみでもご相談ください。
特に大阪・兵庫を中心とした関西圏で店舗や住宅づくりを検討中の方、ぜひ当社のモノづくりのコンセプトを以下のリンクからご覧ください。

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執筆者略歴

[執筆者 / 監修]
三浦喜世
一級建築士
2007年から一級建築士事務所YMa主催
大阪、兵庫を拠点として店舗、注文住宅、共同住宅等の企画・デザイン・設計及び監理、中古住宅やマンションのリノベーション、オリジナル家具のデザイン・製作等を行う。
[受賞歴]
リノベーションアイデアコンペ 視点特別賞 受賞
東京デザイナーズウィークプロ作品展 出展
Design Competition in Kainan 入選
デザイントープ小論文コンペティション 入選

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