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狭小住宅のキッチンの配置と施工事例

狭小住宅のキッチンの配置と施工事例

限られた空間には壁付けキッチンがおすすめ!?
建売住宅や賃貸物件では、狭い空間でも無理に対面キッチンにしている例をよく見かけます。しかし、これでは限られた空間で豊かな生活を送るのが難しくなっていることがあります。
当設計事務所では、スペースの限られた中古マンションのリノベーションや狭小住宅では、リビング・ダイニングを有効に使う為に、人気の対面型ではなくウォール型キッチンとも呼ばれている壁付けキッチンをお勧めすることが多いです。

壁付けキッチンのメリットとデメリットを解説しながら、当設計事務所が狭小住宅に壁付けキッチンをお勧めする理由を解説してみました。

狭小住宅のキッチンを壁付けにするメリット

住宅の中でも、水回りは後から変更することが難しい部分です。
特にキッチンは家族の目に触れる時間が長く、空間の使い方にも大きな影響を与えます。設計段階でよく考えて計画を立てることで住まいがより豊かになります。
ここでは狭小住宅で壁付けキッチンを採用するメリットを考えていきましょう。

●建築で生活を豊かに!建築家と建てる注文住宅

リビング・ダイニングのスペースを広くとれる

狭小住宅に壁付けキッチンを採用する最大のメリットとしては、リビング・ダイニングを広く使えるところにあると考えています。
限られた空間で豊かな生活を送るためには、使っていないときは同じ場所をできるだけ多くの用途に使えるようにデザインすることが重要になってきます。
キッチンを壁に向けることで、料理中はキッチンとなる空間が、食事中はダイニング、その他の時には子供の勉強場所になったり、家族団欒のリビングとして姿を変えて生活の場になります。
実際に空間が広くなるというわけではありませんが、時間帯によって複数の用途に使えるように設計することで、家が広くなったように感じることができます。

逆に対面キッチンで、リビング・ダイニングとの間に仕切りを作ってしまうと、それぞれの場所が分断されて用途が固定されてしまいます。
十分な広さを確保できる場合はそれでもいいのですが、スペースの限られた狭小住宅では設計で広い空間を作り出す工夫をしてみてはいかがでしょうか?

もちろん、キッチンの配置だけではなく、カップボードも別注で作ってより使いやすいキッチン空間に仕上げることができます。
当事務所では家具工房との共同でオーダー家具の提案、製作も行っておりますので、一度ご相談ください。
●おしゃれな造作カップボードで収納のデッドスペースをなくそう

その住宅のプランにもよるのですが、空間の限られた狭小住宅で効率良く空間を使うためには、壁付けキッチンをお勧めしています。
※配置のプランについては、『狭小住宅のキッチンの配置と施工事例』の項目を参考にしてください。

ダイニングとキッチンの関係が密になる

対面型のキッチンの方がダイニングやリビングとの関係が密になると思われる方が多いのですが、意外と壁付けキッチンの方が、対面型のキッチンに比べて、ダイニングテーブルとの関係が密になると考えています。

対面キッチンでは回りこまないとダイニングまで行くことができません。しかし(ダイニングテーブルの配置にもよりますが)壁付キッチンでは調理中に廻り込まなくても後ろを振り向くだけで配膳ができますし、ダイニングで食事をしているときでも、後ろを向くだけでキッチンに立つことができます。
育ち盛りの子供さんのおかわりもスムーズですし、食後のドリンクタイムのおつまみの準備も最短の動線で可能になります。
お客さんを招いてのホームパーティで食事会をしている時でも、パーティから退席することなく最短の動線(振り向くだけ)で追加の料理の仕上げをして出すことができます。

これは狭小住宅に限ったメリットではありません。十分な空間が確保できているときでも壁付キッチンの採用を検討するきっかけになるかもしれませんね。

キッチンのデザインを楽しめる

壁付キッチンの魅力は、機能的なことだけではありません。
キッチン本体のデザインを一番楽しめるのは、カウンター越しに見える「対面キッチン」ではなくリビング・ダイニングからの視線にさらされる「壁付けキッチン」ではないでしょうか。
これも狭小住宅に限ったメリットではないのですが、奥まった対面キッチンとは異なり、壁付キッチンは前面に出てくるので素材や色を楽しむことができます。

この記事のメインに採用した写真のマンションリノベーションの例では、暖かみのある無垢フローリング貼の床と壁、建具に対比して、印象的なステンレスキッチンにしています。
壁面もキッチンパネルではなくタイル貼にし、その周りには構造躯体をそのまま現した壁や、シンプルな白い造作カップボードが配されています。

このリノベーションでは、全体的に無垢フローリングが柔らかい雰囲気を醸し出しているのですが、ステンレスやコンクリート、タイルでアクセントを付けました。
中でもステンレスキッチンはひときわ存在感を放っています。
●御影の家リノベーション

壁付けキッチンのデメリット

壁付けキッチン

キッチンが丸見えになる

これが唯一といってもいい、壁付けキッチンのデメリットだと思います。
壁付けキッチンの場合はリビング・ダイニングとキッチンの間を遮るものがありません。その為どうしてもキッチンが丸見えになってしまうので、それが嫌な方には向いていないかもしれません。キッチンの背面にカウンターを付ける等の工夫もできますが、そうなると限られた空間でリビング・ダイニングを広く使えるという最大のメリットが薄れてしまいます。

ただ、対面キッチンにしてもキッチンが見えなくなるわけではありません。対面でも壁付でも、どちらにしてもキッチンはきれいにしておかなければ見栄えがよくありませんね。

コミュニケーションが取りにくい?

壁を向いて調理する為、リビング・ダイニングにいる家族やお客さんとコミュニケーションが取りにくいとか、小さな子供さんの様子が見えにくいなどとよく言われますが、本当にそうでしょうか。
対面していても料理する時は手元を見ていますし、壁を向いていても首を振るだけで全体を見渡すことができませんか?

それよりも、食事をしながらキッチンに立ちやすい壁付けキッチンの方が、食事中のコミュニケーションを中断しなくていいので、コミュニケーションに向いているのではないでしょうか。
よく言われる、「対面キッチンに比べて壁付けキッチンはコミュニケーションが取りにくい」というのは、デメリットにはならないと考えています。

狭小住宅のキッチンの配置と施工事例

マンションリノベーション

狭小住宅のキッチンの施工例
●「可変的な空間のゾーニング」によるマンションリノベーション
一般的なマンションのリノベーションではスペースが限られてしまいます。
だいたい60㎡前後の専有部分、その中で平均して2~3LDKを取ろうとします。
可動間仕切によって臨機応変な空間を作ることはできるのですが、3LDKにしようとしたらLDKにさける面積は20㎡(12.5畳)程度でしょうか。
30坪程度の戸建住宅ならLDKは20畳ぐらいを目安に計画するので、広いとは言えないLDKです。
その広くはないLDKの中で『どう空間をやり取りして、豊かに生活するか』というのが設計のアイデアの出しどころです。
このリノベーションでは可動間仕切りとキッチンの配置を工夫することによって豊かな空間を生み出そうと考えました。

LDKの中でリビング・ダイニング・キッチン、それぞれのコーナーのスペースを広くとるにはそれぞれのコーナーの空間を共有していく必要があります。
まずはキッチンとダイニングの境目をあいまいにしていきたいのですが、それにはやはり壁付けキッチンです。
アイランド型のキッチンではどうしてもキッチンに汎用性がなくてリビングダイニングを圧迫してしまいますが、壁付けキッチンだとダイニングとキッチンを共有できるのでリビングをしっかり取れます。
料理中はダイニングチェアをダイニングテーブルに収納しておけばキッチンスペースが十分に取れます。料理が出来上がって食事が始まると、家族でダイニングテーブルを囲むことができます。食事をしながらでも、後ろを向けばキッチンに立てるというのは、対面キッチンよりも便利な空間構成ではないでしょうか?

さらにこの事例では、リビングがある程度独立しているので、食後のダイニングが散らかったままでも、リビングでテレビを見ながらまったりタイムを楽しむことができるのです。(ダイニングの片づけは明朝頑張りましょう)

他にはキッチンとは直接関係ないのですが、洋室1や洋室2とリビングとの関係にバリエーションを多く持てます。家族だけの時、お客さんが来たとき、軽いホームパーティ等、1~3LDKを行ったり来たりしながら空間を使うことができるのです。

面積の限られたマンションのリノベーションではリビング・ダイニング・キッチン・個室といった各所のスペースを固定せずに流動的に使うことが住みやすさにつながるのではないかと思っています。
そういった視点で考えると、キッチンは対面よりも壁付けが一歩リードするのではないでしょうか?

この住宅ではリビングと個室の間にある可動間仕切りを開け放つことによって、リビングを広く使うこともできます。

一人暮らし用の平屋住宅

狭小住宅のキッチンの施工例
定年退職後の一人暮らし用の住居です。
所有していた土地に小さな家を建てて住むというプロジェクトなのですが、47.62㎡という床面積は1LDKのマンション程度の広さです。
実際の間取りも1LDKで、可動間仕切で洋室とLDKを一体にもできる間取りです。

このLDKですが、約30年前、今まで住んでいた家を建てたときに購入したダイニングテーブル・チェアを中心にレイアウトされています。
このダイニングテーブル・チェアはもちろん前に住んでいた家でも使われていたものなのですが、思い入れのあるテーブル・チェアです。今回新築住宅を建てるときにも、前から使っていたこのダイニングテーブルを持ってくるということが前提でした。

キッチンやダイニングテーブルの配置、それからキッチン周りだけではなくて前面道路と掃き出し窓の関係もいろいろ検討してみたところ、対面キッチンやアイランドキッチンにすると、LDKから掃き出し窓を介して袋小路になった前面道路との関係がうまくいきません。
この住宅の特徴として、近所の人しか通らないある程度閉ざされた袋小路に面した掃き出し窓のところで縁側のように座ることをイメージしていたのです。
やっぱりキッチンは壁付けかなということろで落ち着きました。

この住宅でもダイニングとキッチンを共有することによって、狭いながらもリビングを確保することができています。

これらの事例はキッチンの配置によって、より豊かな環境が作れる例だと思っています。

狭小住宅のキッチンの考えかた

家族の集まるLDKのデザインは、リノベーション住宅にとっても注文住宅にとってもたいへん重要な核の部分になってきます。
リビング・ダイニング・キッチンが壁や腰壁・可動間仕切等によって仕切られたり仕切られなかったり・・・、それぞれの空間が干渉し合いながら居場所をつくります。
中でもダイニングテーブルやソファと違って、キッチンは後から移動させることができません。キッチンの形状や配置を決める前に生活スタイルとスペースの配分を良く考えて設計しておくことが大切です。

ここでは狭小住宅に対して壁付けキッチンをお勧めしてきましたが、もちろん対面キッチンにもメリットはあります。
住宅の間取りや面積、生活スタイルによっていろんな選択肢があるのがキッチンです。
住宅デザインで、キッチンデザインで、生活を豊かにしましょう!

●おしゃれな造作カップボードで収納のデッドスペースをなくそう
●無垢材カウンタートップのオーダーキッチン
●オーダー家具職人と人工大理石のオーダーキッチンをつくりました

●家づくりを検討中の方へ

ここまで、狭小住宅のキッチンについて検証してきましたが、
当建築設計事務所では戸建住宅やマンションリノベーション等の住宅デザイン・設計・施工を、土地や物件探しやローンの相談から始まり、竣工引渡、更にはアフターフォローまでワンストップで行っています。
デザインの他、構造、省エネ性能、使いやすさ、将来への汎用性等、建築主によって家を建てる上で中心に据える部分は異なります。

キッチン一つとってもそこから豊かな生活を作ることができます。
よろしければ住まいづくりについて相談等ありましたら連絡お待ちしています。


当社では基本的には設計施工で承っておりますが、設計のみ、施工のみでもご相談ください。
特に大阪・兵庫を中心とした関西圏で家づくりを検討中の方、ぜひ当社のモノづくりのコンセプトを以下のリンクからご覧ください。


●住宅設計はこちらへ
住宅設計

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マンションリノベーション

●造作家具はこちらへ
造作家具

執筆者略歴

[執筆者 / 監修]
三浦喜世
一級建築士
2007年から一級建築士事務所YMa主催
大阪、兵庫を拠点として店舗、注文住宅、共同住宅等の企画・デザイン・設計及び監理、中古住宅やマンションのリノベーション、オリジナル家具のデザイン・製作等を行う。
[受賞歴]
リノベーションアイデアコンペ 視点特別賞 受賞
東京デザイナーズウィークプロ作品展 出展
Design Competition in Kainan 入選
デザイントープ小論文コンペティション 入選

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