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安心安全なセルフビルドを、、、専門家の監理のもとにDIYの工事をしましょう

安心安全なセルフビルドを、、、専門家の監理のもとにDIYの工事をしましょう

びっくりするような話ですが、詐欺師に騙されそうになった相談を受けたので紹介します。

鉄骨造の建築物(小規模な工場)の構造躯体をセルフビルドで建てたいという相談を受けました。
結論から言うと、当建築設計事務所では専門業者でない方が構造躯体工事等の建築物の根幹をなす部分をセルフビルドする工事の設計も工事監理も責任が持てないので、そういった仕事は請けていません。

構造躯体のセルフビルドは無理ですよ!

塗装等の仕上工事をDIYで行うことで建築費を抑えようという試みは今までもありましたが、経験と適切な知識のない方が構造躯体をセルフビルドと言うのは、現状の日本の法律ではさすがに無理があります。

今回相談いただいたオーナーが外国の方で、その地域の国ではセルフビルドが当たり前に行われているようです。
確かに日本人の建築家が海外で大規模なセルフビルドの工事を長期にわたって監理するといった事例も見た事がありますが、、、それは海外での事ですし、建築雑誌で見ただけなので詳細は不明ですがその建物でも構造躯体は建築の専門業者に依頼しているかもしれません。

オーナーの言い分は、『普段、鉄を扱った仕事をしているので溶接などの技術にも長けている。今回の計画ぐらいの小規模な建物なら自分たちで作れる!』ということなのですが、オーナーの工場で建築工事を請け負った事ないですよね・・・

鉄骨構造部材の発注先について

この辺りのことはあんまり詳しく解説しても、ほとんどの建築主に関係がないのでざっと触れておきます。
鉄骨の構造部材はどの工場から買ってもいいわけではないのです。
まず、鉄骨工場が国土交通省から認定されている必要があります。
その認定の中でも建てる建築物の規模や扱う鉄骨材の強度によって、鉄骨工場はグレード分けされています。同じサイズで同じ形状の鉄骨部材に見えてもその部材自身の性能によって許容応力度が異なることがあるのです。

今回の依頼ような小さい工場であれば、グレードの低い認定を受けた鉄骨工場でもだいじょうぶですが、それを理解していない人がセルフビルドをするのは危険ですし、当設計事務所ではその工事を監理することはできません。
発注しようとしている鉄骨工場が認定を取っているかもわかりませんし(まともなら、この話を受ける工場であれば認定を受けている可能性は高いかもしれませんが)、建て方現場での職人さんの溶接などの技術も建築用のそれとはおそらく異なるでしょう。

それって悪徳業者ではないですか?

この工場のオーナーの話をよく聞いてみると、知り合いの建築関係の業者で構造躯体をセルフビルドで造ることで費用を抑えられると言っている人がいるそうです。
今でもこんな感覚の業者がいるということが信じられませんけど、、、本気で言っているとしたら、普通に考えて悪徳業者ですね(笑)

当然ですが、鉄骨不足で納期がかかるから早く発注しないといけないといって、こんな業者にそそのかされて発注してしまってはいけません。そもそも構造計算もしていない段階で構造部材の発注なんてできませんから。。。

今回は説明して理解をいただきましたけど、構造躯体等のような建築の根幹をなすもの以外の仕上工事等のセルフビルドでも、そもそも自分で住む住宅以外の建築物でDIYは効率が悪いです。
動画やSNSの配信等、セルフビルドを行うことで何か別の付加価値がつく場合は別ですが、DIYにかける時間があるのであれば本職の仕事をして、その分を稼いだ方が良いわけです。
これは工場だけではなく店舗や事務所、賃貸マンション等の建築でも同じことだと思っています。
働く舞台をつくる場合は、できれば得意なところでその技術を発揮するのが一番ではないでしょうか?

今回の業者の場合は工事はできると言っておきながら、自分のところでは設計ができないから、設計はオーナーのつてをだどって設計事務所に頼んでほしいと言ってきていたそうです。
悪徳と言うよりも、無理してでも仕事を取りたかったかわいそうな業者なんでしょうね、でもこんな業者に騙されてはいけませんよ!

過去に建てられた国内に存在する違法建築

そうは言っても1970年代までは国内でもセルフビルドでそこそこの規模の建物が建てられていました。
有名なものでは高知の[沢田マンション]があります。
この建物は、建築には素人の手で1971年に着工して増築を繰り返しながら現在も存続している建築物なのですが、もちろんその当時から違法建築です。確認申請も完了検査も受けていません。さすがに今は増築はやめてメンテナンスだけして存続させているみたいですけど。。。
1981年から構造設計の基準が変わったので、その辺りからこういった建築はなくなってきたのかもしれません。

[沢田マンション]はその素人の手で増改築が繰り返された建築の形態と、その空間を利用する住人のコミュニティの特異さから、建築設計者からも注目される存在となり、ある意味で建築基準法を超えた芸術作品のようになっています。

[沢田マンション]以外にもそれに似たような違法建築のオーナーが身近にもいますが、今はこういう建物を建てられる時代ではありません。倫理的にも役所の監視的にもセルフビルドで建築や増築はできなくなっています。

安心・安全なDIYを心掛けましょう

今の時代特有のDIYチューチューバーも多く存在していますし、それぞれに面白いアイデアで空間をつくられていると思いますが、そういった方々はできることとできないことの線引きはしっかりしているように見えます。
知識のないままに構造を触るなんてことは問題外です!

セルフビルドは注文住宅づくりの一つの醍醐味でもあるのかもしれませんが、専門家の監修の基で安心安全なDIYを行ってください。

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