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飲食店のセントラルキッチンを、店舗デザインの目線で考える

飲食店のセントラルキッチンを、店舗デザインの目線で考える



セントラルキッチンとは?

主に多店舗展開する飲食店で、提供するメニューの製造を一カ所で集中して行う拠点となるキッチンのことです。
原材料の配送や保存、調理作業等の効率化を図りコストを抑えることを目的として作られますが、特にECサイトでの販売も行っている店舗ではより有益です。

実際に施工したセントラルキッチンとしては、倉庫の一角で2~3坪ほどの面積でスープの調合だけを行う小規模なセントラルキッチンもあれば、100㎡以上の面積を使って事務所兼セントラルキッチンで店舗の本社としての機能を持ちながら、個別販売するカウンターまで設ける場合もあります。

セントラルキッチンは様々な目的をもって作られます。
現状一店舗しかなくても、事務所の一角に簡単なドライキッチンでセントラルキッチンを作った例もあります。
多様な形態を持つセントラルキッチンは、店舗経営を大きく変える可能性を持ったツールになり得ます。多店舗展開やEC販売を検討していたり、オペレーションに行き詰った店舗オーナーの方は一考の価値ありです。

飲食店がセントラルキッチンを導入するメリット

各店舗で提供する料理の品質が安定する

フランチャイズ等で多店舗展開している飲食店では、店舗数が増えると、「店舗によって料理の品質がバラバラ」なんてことが起こりがちです。
多店舗経営の飲食店では、各店舗で提供する料理の品質を安定させることが重要で、難しい作業になります。

そこでセントラルキッチンで一括して調理したものを各店舗に届けることで一定の品質を確保しやすくなります。料理の品質を安定させる為にはひとつの場所でまとめて調理することには大きなメリットがあります。

たとえ現状で一店舗しかない場合でも、店舗で調理するよりもオフィス兼小規模セントラルキッチンで、オーナーが基本的な味を調えておけば、オーナー不在時でも提供する料理が安定する上に、将来の多店舗展開も視野に入れることができます。
もちろん、小規模セントラルキッチンの場合は、費用対効果を考えた規模と作りのセントラルキッチンにする必要があります。

家賃や人件費等の費用を抑えることができる

調理作業をひとつの場所にまとめるセントラルキッチンから半調理済みの食材が届けば、高い調理スキルを持つスタッフを各店舗に配置する必要がなくなり、更に各店舗の調理スペースを小さくすることができます。

・各店舗の調理スタッフは簡単な作業で安定した料理を提供することができるため、熟練した調理スタッフの人数を減らすことができる。
・店舗は人の集まる場所(家賃の高い場所)、セントラルキッチンは家賃の安い場所に設置することで家賃を削減することができる。
といったところでセントラルキッチンは経費節減にも一役買います。

また、セントラルキッチンでは各店舗の食材を一括で仕入れるため、仕入れ値を交渉しやすくなるうえに、食材の保管もやりやすくなります。

ECサイトでの販売にも対応できる

大量に安定した料理を提供できるセントラルキッチンがあれば、インターネット等を使った通信販売にも対応しやすくなります。
初期費用はかかりますが、セントラルキッチンにオフィスも併設しておけば調理だけでなく、通信販売や各店舗の管理も一手にまとめることができて業務がスムーズに行えます。

飲食店がセントラルキッチンを導入するデメリット

・初期費用が高額
たとえ小規模であってもセントラルキッチンを作るには業務用厨房機器をそろえなければなりませんし、必要に応じて建築・内装・設備・防水工事等が必要になります。
小規模で簡単な調理しかしない場合でドライキッチンのセントラルキッチンであれば100~200万円程度で作った例もありますが、防水工事が必要な場合は小規模でも500万円程度、大規模なセントラルキッチンでは1000万円以上の費用を見積もっておいてもいいと思います。

・料理の鮮度を保つのが難しい
セントラルキッチンでは、調理した料理を輸送する必要があります。そのため各店舗で調理する形態の飲食店よりは料理の鮮度を保ちにくくなってしまいます。

・食中毒等のリスク
セントラルキッチンで食中毒が起こるなどして機能が停止してしまうと、全ての店舗の営業ができなくなってしまいます。各店舗で調理する場合と比べるとリスクが分散されません。
セントラルキッチンは効率的なのですが、衛生面やその他の問題が発生した場合は全店舗の営業を停止するしかなくなることもあります。

セントラルキッチンの施工事例

飲食店のセントラルキッチン現場
厨房とプレハブ冷蔵庫・冷凍庫、事務所で構成される、多店舗展開している飲食店のセントラルキッチンの施工現場です。

セントラルキッチンとは言っても、この店舗でも販売を行うので、デザインにも少しこだわりたいというところなのですが、このプロジェクトは予算優先です。
設計も厨房設備を優先して進めてきたので、この段階では施工現場で気になるのは給排気、給排水、電気等の設備の仕込みです。

本日はフードの排気やエアコンを中心とした給排気設備の仕込みの様子を見に来ました。
厨房機器の火力が大きいので、比例して排気量が大きくなり、エアコンが効かないだろうということが想像されます。 対応としては、飲食店の厨房ではよく採用されるやり方なのですが、厨房全体をエアコンで冷やすのではなく、ピンポイントで冷気を人に当てる方法で計画しました。

飲食店のセントラルキッチン現場
最初の写真とあわせてご覧ください
壁沿いの2本のダクトはフードの排気用、ライトで光ってわかりにくいのですがさらに奥のコンクリートの壁沿いにもフード排気が2本直接外に出されています。見るからに排気量が多そうですね。
右奥のクーラーから4本出ているふわふわの断熱材がまかれたダクトがスポットクーラーで、この排気量に負けずに、要所に吹き出し口を設けて従業員さんの体を冷やしてくれます。
極力既存のスリーブを使用していますが、配管が外へ出ているこのコンクリートの壁は構造壁ではないので開口してもだいじょうぶということで建物オーナーから許可をいただいています。
これで給排気はだいたいの配管は完了しているので、天井下地をしてから電気工事に移ります。

床を見るとコンクリートブロックに囲われた部分があるのですが、これが厨房区画です。
この区画を防水してから給排水設備、ガス設備の仕込が始まります。

仕上工事と違って目に見えて工事が進んでいることが確認しづらい設備工事は地味ですが、手抜きのできない大切な工事です。
通常のお客さんの入る店舗でも、最低限必要になる部分として設備工事の予算を押えてから、デザインに予算を分配していきます。契約前の見積の金額調整もデザインに関することが多くなります。

機能優先のセントラルキッチンで、どこまでデザインに費用をさけるでしょうか?

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