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大阪市の工場プロジェクトで考えた増築と完了検査済証

大阪市の工場プロジェクトで考えた増築と完了検査済証

大阪市で工場の建築の相談がありました。
既存工場の隣の小さな土地を購入して、今後の増築も視野に入れながら新しい工場を作ろうという計画です。

今回の計画は15坪にも満たない小さな敷地なのですが、仕事も増えている勢いのある工場で、さらに隣の土地の購入、増築も視野に入れている未来を感じさせるプロジェクトです。

既存工場に増築しない訳

ここでどうして既存工場に増築しないのか疑問に思われるかもしれません。
当然新旧工場を一体で使えるほうが便利なのですが、この既存工場には検査済証が交付されていません。
さらに、見るからに建蔽率オーバーしている違法建築です。
違法建築と聞けば物騒なように思いますが、40~50年程度前の建物では、確認申請による確認済証が交付されていても、工事完了の検査を受けていない建物が結構多いのです。

※有名な違法建築[沢田マンション]
話は飛びますが、有名な違法建築といえば高知県にある[沢田マンション]です。
これは確認申請を取らず、素人の施工によって増築が繰り返されて今の形になっています。着工は1971年、さすがに今は増築を進めてはいないようですが、そのころは役所も緩かったようですね。
今でも建築関係者が見学に来たりしています。

既存部分の調査について

完了検査を受けていない既存建築物へは現実的には合法的に増築はできません。
既存工場と新設工場を適法につなげることはできないということです。

大阪市の場合は、検査を受けていない建築物が増築のために確認申請を通そうとすれば、確認申請の前に検査済証が交付されていない建築物とその敷地の適法性を調査し、現況調査報告書の提出が求められることになります。
この調査は意匠や設備だけでなく基礎を含んだ隠れた構造部分も調査しないといけないので壁をはがしたり、コンクリートを削ったりと大変な手間がかかりますし、当然費用もかなりのものになります。さらに調査結果によっては既存建築物の是正などの対応が求められます。

市役所には頭から計画を否定されることはないと思いますが、こういった計画の場合は費用も時間もかかるので現実的には実現しないといってもいいでしょう。
過去にもこういった相談を受けましたが、計画自体を取りやめるか、その全てで既存建築物を解体して再建築するといった判断を行っています。

完了検査を受けていない建物が存在すること

昭和25年に施行された建築基準法も形を変えながら今に至っています。
確認が通ればローンが実行された時代もあったと聞いたことがあります。

今はローンを決済するためにも完了検査済証の取得を求められます。
基本的にローンは建物が引き渡された時に実行されるもので、それまではつなぎ融資や分割融資でしのいだりするのですが、原則完了検査済証が交付されない限りローンは実行されません。

今は通報や役所のチェックも厳しくなり、完了検査を受けない建物は建てられなくなっています。
まだまだたくさんの違法建築は残っていますが、だんだん検査を受けていない建物は少なくなっていくでしょう。

工場プロジェクト計画の進行

増築と確認済証
さて、工場プロジェクトの進捗ですが、既存建物とは独立した工場として検討しています。
増築ではなく新築となったわけです。特に新工場の建築を妨げる障害はありません。
既存建築物の横の敷地を購入し、別館の工場を建て、そこからさらに増築を重ねて大きくなっていく計画の第一歩です。

しかし、別の理由でこのプロジェクトは一旦止まることになります。
建築資金が確保できなかったのです。銀行からの融資が通らなかったので計画は先に持ち越しということになりました。

土地の購入を設計事務所に相談するというのはまだまだ浸透していないと思います。
しかし、不動産会社のスタッフよりも建築設計事務所のスタッフのほうが建築には詳しく、土地購入の契約を急がせることはありません。
事前に建築の竣工やその建物の使用までを想定して、予算や工期などの見通しを立ててから大きなお金を動かすことをお勧めします。
大きな買い物をしてしまう前に建築設計事務所にも一度相談してください。

この工場のプロジェクトが再始動することを願っています。

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