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飲食店のセントラルキッチンの現地調査 -事例

飲食店のセントラルキッチンを作る為に現場調査を行いました。
セントラルキッチンを作るということで設計の依頼をいただいたのですが、設計に入る前にその物件の立地、形状、設備の状態等を調べるために現場調査を行う必要があります。 今回はその現場調査の事例のレポートです。

店舗の現地調査

物件は大阪市内の古い賃貸マンションの1階の店舗なのですが、元々店舗用の仕様になっているので設備的にここには入れないということはなさそうです。
店舗を作るには電気、ガス、水道、それからレンジフードや空調を含む給排気設備等が重要になってきます。
ひとつづつ見ていきましょう。


店舗の設備スペックについてこちらの記事も併せてごらんください
店舗の設備スペック

電気設備

店舗の現地調査
まずはすぐに見つかった電気の分電盤を確認。
大きな分電盤が入っていて電灯、動力共に電気容量は(導入する厨房機器の仕様にもよりますけれども)余裕がありそうです。よほど大容量の電気を消費する厨房機器をたくさん入れない限り電気容量を増やす必要はなさそうですが、早めに使う厨房機器を決めて必要な電気容量を確認したら安心できます。
特に問題ないでしょう。

ガス設備

店舗の現地調査
次にガスです。
ガスは引き込まれてはいましたが、容量が小さいです。
前のテナントさんはガスは給湯器にしか使っていなかったようですね。飲食店のセントラルキッチンとしてはこれでは全然足りないでしょう。大きなサイズで新たに引き込まなければいけません。
ガスの引込を工事の見積もりに入れておいてもらう必要があります。

店舗は1階だけであとは賃貸住宅なのでおそらく容量アップはできると思いますけど、建物でガス容量の上限が決まっている場合もあるので早めにガスの調査はしたほうがいいです。
あと、ガスは大阪ガスの代理店の工事になるのですが、ガスの引込工事ってなかなか来てくれないので早めに発注しておかないといけません。

給排水設備

給水引込

店舗の現地調査
給水引込みは25mmなので容量的にはいいでしょう、給水は天井を通せばどこにでも持っていけます。
厨房機器の配置に従って湯水を提供していきます。

排水竪管の位置

店舗の現地調査
厨房などの水廻りは最終的に排水竪管に流すことになるのですが、この排水竪管が厨房として使う予定の位置にありません。
前のテナントさんはこの場所を事務所として使っていたようです。
ということで厨房の排水を近くの枡までもっていく必要が出てきたので、厨房の位置を変更する、床をあげて排水経路を確保する等の工夫が必要になるでしょう。
厨房の位置を変更すると使い勝手が悪くなってしまうので、おそらく床上げして対応することになると思います。
幸い天井高は十分にあるので床をあげても計画は可能です。

ほとんどの現場で排水竪管の位置は空間の使い方に大きな影響を与えることになります。

厨房の床上げ

厨房区画内は各厨房機器からの排水配管をするし、グリーストラップをつける必要があります。
このために厨房内は床上げしないといけなくて、現状の土間の上に300mm程度コンクリートを打つことになりそうです。
この時、床上げ用のコンクリートは一般的には建物構造への影響も考慮して、軽量コンクリートを使ったり、スタイロなどでかさ上げして軽量化を図ったりといった方法がとられます。

床をあげなくても、土間をはつって排水経路を確保することもできるように思われるかもしれませんが、土間は建築物の構造と一体になっている可能性が高いのでお勧めしません。
建築図面を確認しないと何とも言えませんが、地中梁が通っていたり土間スラブ自体が構造体の一部になっていたりするのです。
というわけでほとんどの場合は現状の床の上に配管をするしかないので、厨房の床の高さは排水の勾配で決まってくることになり、排水設備のいらないところとはどうしても段差ができてしまいます。
このことが店舗でよくある客席とキッチンの高さが違う原因になってしまっているのですが、新しい建物(特に共同住宅のトイレ、浴室に多いです)ではあらかじめ水廻りを想定した部分のスラブを下げることで配管スペースを確保して、段差をなくせるようにしているものもあります。

給排気設備

店舗の現地調査
給排気については、建物が鉄骨造なので外壁にスリーブ(穴)をあけることを許可してもらえれば容量は確保できるでしょう。天井高も高いので配管スペースも問題ないと思います。
ただし、レンジフードや空調、それからウォークイン冷蔵庫を置くために建物外部に室外機や換気扇を置くスペースが必要になるのですが、外のスペースはちょっと狭いですね。
室外機を置けないということはないでしょうけど、置く場所については事前に確認する必要はあるかもしれません。

レンジフードの吹き出し口の位置

レンジフードの換気扇の吹き出し口についてですが、上階が賃貸マンションということも考慮して位置を決めないといけません。ちょうど厨房を作る予定の壁面が住宅の窓も少なくよさそうですが、これも事前に大家さんと相談しておくほうがいいと思います。
ラーメン店なのであまり煙が出ることはないかもしれませんが、住人としては匂いは気になりますからね。
賃貸住宅ということと、住人の方も元々1階が店舗だということを認識して住まれているでしょうから比較的対応はしやすいと思いますが、逆に考えると住宅を選ぶときは隣の建物も含めて周辺環境を考えて選ばないといけないですね。
店舗のほうが家賃が多くとれるということで1階を店舗にしている賃貸マンションは多いですから。

店舗物件の現地調査では、内観だけではなく建物の外周もしっかりとチェックしておきましょう。

設計へ

いろいろと見てきましたが、この現地調査を踏まえて設計をまとめます。
おそらく店舗オーナーの意図したセントラルキッチンは作れそうですが、大家さんとの交渉やこれから起こるであろうトラブルを未然に防ぐためにもこれらの情報は店舗オーナーと共有しておきます。
それでは設計作業に取り掛かかっていこうと思います。

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